2021年7月7日、日遊協のパチンコ・パチスロ依存問題防止研究会が、「遊技障害うたがい」（以下、ギャンブル依存症）について言及した。
報告によれば、出玉性能や広告宣伝、イベントがギャンブル依存症になる原因とは言えないそうだ。
約2年間の遊技者に対して3回の追跡調査を行い、出玉性能、広告宣伝やイベントは、「ぱちんこ関連のギャンブル等依存症の原因になるとは言えない」との調査分析結果とした。併せて「コロナ禍」で、「ぱちんこ関連のギャンブル等依存症を増やしたとは言えない」、「健全プレイ(金額制限、時間制限)の推進が予防的に有望」とした。
そもそもギャンブル依存症は、パチンコや競馬などにのめりこみ、日常生活などに支障をきたす状態のことを指す。中でもパチンコやパチスロは機械そのものに依存させる要因があると言われている。
パチンコやスロットのような電子ゲーム機の場合は、機械そのものに依存させる要因があります。例えば、あと一歩で当たる場面を見ると、脳の中の高揚感を感じる部位（「報酬系」と呼ばれ、ドーパミンという物質が関係しています）の働きが活発になってギャンブルを続けたいと思わせてしまいます。また、パチンコ台やスロット台の画像や音響には、負けていても勝っているかのような錯覚をおこさせて脳内の報酬系を活発にする効果があります。
パチンコやパチスロはギャンブルの中でも比較的気軽に遊技することができるため、他の賭け事に比べハードルが低くギャンブル依存症に繋がりやすいとのこと。
［参考］
パチンコ・パチスロ依存（のめり込み）問題の概要と対策
しかし、今回の日遊協の発表はこの定義を否定していることになる。なお裏付ける調査は1000人のパチンコ・パチスロユーザーを対象に2年間にわたり行ったそうだ。
同会は2年間で3回にわたる追跡調査を、パチンコ・パチスロユーザー1,000人に対して実施。遊技障害を測定する項目に加え、パチンコ機では、ミドル、ライトミドル、甘デジ、パチスロではAT・ART、A＋ART、ノーマル、30φと、それぞれの仕様別に分類して調査を行った。さらに、使用金額、遊技時間、広告宣伝の視聴、イベント参加経験なども合わせて質問し、その回答を踏まえ、どの様な依存リスクが生じるのかを分析。いずれも、統計上、依存のリスクを増加させる要因とはいえない結果が示された。
現行パチンコ・パチスロ機の出玉性能「依存リスクを高めるとはいえない」とする研究結果を報告
つまり、出玉性能や広告、イベントをきっかけにギャンブル依存症になることはなく、原因は当人にあるという。このことを踏まえて日遊協は「ぱちんこモデル2021」を示した。
①ぱちんこ遊技は個人の選択と責任である
②事業者は、プレイヤーが適切な選択ができるよう、正確な情報を提供する
③安全なぱちんこプレイは可能だし、ほとんどの人はそのように遊んでいる
④高いリスクの人(※)にとっては、ぱちんこが自身や家族に大きな害となりうる
(※)不安、抑うつ、衝動性が高い人。刺激希求性が高い人がストレスを感じている時。両価性の強い人。自分はぱちんこがコントロールできないと思っている人。併存障害を持つ人。「暮らし」「仕事」「学習」「余暇」に楽しさが見いだせない、生きづらい。
⑤ぱちんこ遊技での問題を減らすのに、断ぱちんこは必須ではない
⑥ぱちんこで問題が生じているプレイヤーでも、参加の制御は可能である
「ぱちんこモデル2021」は「自己申告・家族申告プログラム」を導入しているホール（2020年末の段階で4,747 店舗）にも影響してくるだろう。
また、大手パチンコ企業マルハンは2020年12月にギャンブル依存問題に対し、「本人の同意書を必要としない家族申告プログラム」を導入しており、こちらにも何かしら変更されると考えることができる。
家族申告プログラムとは、家族からの申告により入店を制限するといったもので、「本人の同意を必要とする家族申告プログラム」と「本人の同意書を必要としない家族申告プログラム」の2種類がある。
店舗での遊技が確認された際、店舗スタッフが客に声をかけることで、本人と家族が安心できる遊技環境をサポートする。
マルハンが全314店舗に「本人の同意書を必要としない家族申告プログラム」を導入 https://t.co/h4fdQ913lK
— パチンコ業界誌「遊技日本」 (@yuginippon) December 1, 2020
「ぱちんこモデル2021」でパチンコやパチスロに関するギャンブル依存症の定義に変更があったとはいえ、自分でコントロールができない人に対しては、引き続きサポートが必要であることには変わりはないので、引き続き関係機関と連携して対策をしてゆかなければならない。